日本的ものづくり支える甘え志向的特徴

2014年8月28日付の某新聞に、三浦俊彦氏(中央大学商学部教授)の目という欄に興味深いコメントが掲載されていたので、全文をご紹介しようと思います。

「集団主義の社会」と言われる日本だが、そこには①同調志向(相手に合わせる)、②甘え志向(相手に合わせてもらう)という2つの側面がある。

集団主義と言うと、集団(相手)に「合わせる」イメージが強いが、相手側から見ると「合わせてもらう」ことになるわけで、コインの表裏だ。「『甘え』の構造」の著者、精神科医の故土居健郎氏によると、ここでの「甘え」は、他人の愛や甘やかし、親切に寄りかかりたい願望のことで、日本では親子関係だけでなく、夫婦、師弟、上司と従業員、企業と消費者など、成人後も至る所でみられるのが特徴という。

このような甘えたい消費者を先回りした、かゆい所に手が届くさまざまな取り組みが日本企業の得意とするところであり、日本のモノづくりの「甘え志向的特徴」と呼ぶことができる。

その代表が、NHKのBS番組「COOL JAPAN 発掘!かっこいいニッポン」の外国人を対象にした調査で以前、「最もクールなもの」として1位に輝いた温水洗浄便座だ。

その先駆者、TOTOは、米企業が1960年代に開発した痔(じ)の患者向け医療用便座をヒントに開発を始めた。使い勝手がよくなかったことから、徹底的に検討を重ね、温水の噴射角度は43度がよいこと、水温はセ氏38度が適温であることなどを突き止め、80年に第1号を発売した。

その後も、便座温度の調節、噴射の強弱の切り替え、マッサージ洗浄、温風乾燥、便座蓋の自動開閉などなど、まさに甘えたい消費者に対して、かゆい所まで手の届くフルサービスの日本的対応を行っている。

サービス業では宅配便が代表例だ。日本では大和運輸(現ヤマト運輸)が76年、「宅急便」のサービス名で行ったのが始まりだが、80年代に急成長し、今や多くの企業が展開している。当初は普通の荷物だけだったが、クール宅急便やゴルフ・スキー便なども生まれ、さらに指定日配達や時間帯配達、また着払い制度や代引き制度など、サービスはどんどん多様化している。

荷物を自宅に取りに来てくれるサービスもあるし、配達時に不在だと再配達も頼める。海外ではこのようなサービスは少ないようで、至れり尽くせりの日本的対応と考えられる。

消費者を先回りして、非常に便利な、何でもできる製品・サービスを作り込む日本企業のこうした甘え志向的特徴は、日本的モノづくりの強みになっている。

全文をご紹介しました。最後までお読み頂き、ありがとうございました

 

2014/08/28